令和元年12月20日に令和2年度税制改正大綱が閣議決定されました。
税制改正大綱は与党が税制調査会を中心に翌年度以降にどのように
税制を変えるべきかを話し合い、まとめるもので政府は大綱に従って通
常国会に税制改正法案を提出するのが通例となっています。
今後の税制がどのように変更されるかを知るうえで非常に有用な資
料となります。
2月のコラムではこの税制大綱の内容について解説させていた
だきます。今回は消費課税に関する税制の改正案を取り上げます。
なお、税制大綱はあくまで税制改正案であるため今後の国会の審議に
より改正内容が変更・中止される場合もありますのでご留意ください。
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●法人に係る消費税の申告期限の特例の創設
法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例の適用を受ける法人が、
「消費税の確定申告書の提出期限を延長する旨の届出書」を提出した場
合には、消費税の確定申告書の提出期限を1月延長することができるよ
うになりました。この改正は、令和3年3月31日以後に終了する事業年
度の末日の属する課税期間から適用されます。
●居住用賃貸建物の仕入税額控除の見直し
不動産の消費税還付スキームは、過去の数度にわたる改正により、封
じられてきましたが、今回も厳しい見直しが入りました。
(1) 課税仕入れの不適用
高額特定資産(税抜1,000万円以上の調整対象固定資産など)に該当
する「居住用賃貸建物」を取得した場合の課税仕入れについては、仕入
税額控除は適用できないこととなりました。
なお、住宅貸付用に供しないことが明らかな部分については、改正後
も仕入税額控除は適用されます。この改正は、令和2年10月1日以後の
建物取得より適用されます(同年3月31日までに締結した契約に基づ
く課税仕入れには適用されません)。
(2) 3年以内の住宅以外の貸付け・譲渡
仕入税額控除の適用を認めないこととされた居住用賃貸建物につい
て、3年以内に住宅以外の貸付けの用に供した場合又は譲渡した場合に
は、3年間の実績に応じて計算した金額を、その課税期間の仕入控除税
額に加算して調整することとされました。
●住宅の貸付け(非課税)の判定
契約において用途が「居住用」と明らかにされていない場合でも、建
物の状況等から居住の用に供することが明らかなものについては、非課
税とすることとなりました。
●高額特定資産を取得した場合の特例
高額特定資産を取得した場合の事業者免税点制度・簡易課税制度の適
用制限対象に、高額特定資産である棚卸資産につき「納税義務の免除を
受けないこととなった場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整」の適用
を受けた場合が追加されました。