令和2年税制改正大綱 資産課税編

坂本&パートナー

2020年03月12日 11:00

 令和元年12月20日に令和2年度税制改正大綱が閣議決定されました。

税制改正大綱は与党が税制調査会を中心に翌年度以降にどのように税

制を変えるべきかを話し合い、まとめるもので政府は大綱に従って通常国

会に税制改正法案を提出するのが通例となっています。

 今後の税制がどのように変更されるかを知るうえで非常に有用な資料と

なります。

 3月のコラムでは、2月に引き続きこの税制大綱の内容について解説さ

せていただきます。今回は資産課税に関する税制の改正案を取り上げます。

 なお、税制大綱はあくまで税制改正案であるため今後の国会の審議によ

り改正内容が変更・中止される場合もありますのでご留意ください。


************************************************************************


●所有者不明土地等に係る措置(固定資産税)

 土地・家屋の固定資産税は、原則として土地の「所有者」(登記簿上の所

有者)に課税されますが、昨今の「所有者不明土地等」の増加に伴い、次

の措置が設けられます。


(1)「現に所有している者」の申告制度化

 市町村長は、その市町村内の土地・家屋について、登記簿に「所有者」

として登記がされている個人が死亡している場合には、その土地・家屋

を「現に所有している者」(現所有者)に、条例で定めるところにより、賦

課徴収に必要な事項を申告させることができることとなりました。


(2)所有者不明土地等の「使用者」に課税

 市町村は、調査を尽くしてもなお固定資産の所有者が一人も明らかとな

らない場合には、その「使用者」を所有者とみなして固定資産課税台帳に

登録し、固定資産税を課することができることとされました。


●国外財産調書制度等の見直し(相続税等)

(1)相続直後の調書等への記載の柔軟化

 相続開始年の年末に有する国外財産に係る国外財産調書については、

相続・遺贈により取得した国外財産(相続国外財産)は記載しないで提出

できるようになりました。


(2)提出がない場合等の加算税等の見直し

 国外財産調書の提出がない場合の過少申告加算税の加重措置の適

用対象に、相続国外財産に対する相続税の修正申告等があった場合等

が追加されました。

 また、国外財産調書に記載すべき国外財産に関する書類の提示・提出

がない場合の加算税の軽減措置・加重措置の特例が創設されました。


●その他の改正(相続税・贈与税)

(1)農地等の納税猶予制度の対象拡大

 特例適用農地等の範囲に、三大都市圏の特定市の市街化区域内に所

在する農地で、地区計画農地保全条例(仮称)により制限を受ける一定の

地区計画の区域内に所在するものが追加されます。


(2)医業継続に係る納税猶予制度の延長

 適用期限が3年延長されます。


(3)相続税の物納の特例の対象拡大

 適用対象となる登録美術品の範囲に制作者が生存中である美術品のう

ち一定のものが追加されます。




関連記事