登録事業者の簡易課税選択届
消費税の納付については、本則課税制度と簡易課税制度の
二つの方法があります。
インボイス制度の導入に伴い消費税の課税事業者になる
方にとっては、消費税の納付や事務負担を考え簡易課税制度を
選択する方もいらっしゃるかと思います。
簡易課税制度を選択する際は届出書の提出が要件となって
きますが、今回はその簡易課税制度の適用のための手続と、
インボイス制度に伴う経過措置についてみていきます。

●急激な事務負担の緩和に簡易課税の検討を
インボイス制度の開始に際して、取引環境の問題から、
登録事業者を選ばざるを得なかった事業者も少なくないと
思われます。これまで消費税に関しては何もしなくとも
よかった事業者もいざ登録事業者となると、適格請求書を
発行し、会計帳簿では課税区分と税抜き経理を行い、
消費税の申告書を作成し、消費税の納税を行うことになり、
一挙に事務負担等が増えることになります。
簡易課税制度は、中小事業者の納税事務負担に配慮する
観点から、事業者の選択により、売上げに係る消費税額を
基礎として仕入れに係る消費税額を算出することができる
制度です。簡易課税制度の採用による事務負担の軽減等も
検討してみましょう。
●本来の簡易課税制度選択届の提出期限
簡易課税制度を選択するには、「消費税簡易課税制度
選択届出書」を所轄税務署長に届出しなければなりません。
提出期限は、適用を受けようとする課税期間の初日の
前日までとされています。
課税事業者は、簡易課税制度を採用した方が自社に
とって有利なのか否かを検討し、期限までに提出するか、
「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出し本則課税に
戻るかします。届出書の提出期限遵守は重要な手続きであり、
税理士損害賠償保険の事故事例としても件数・支払金額とも
大きな割合を占めている要注意手続きです。
●インボイス制度導入に伴う経過措置あり
今回のインボイス制度導入に際してはいくつかの経過措置が
取られています。その一つとして、免税事業者が
令和5年 10 月1日から登録の効果が生じ課税事業者となる
ということがあります。この経過措置の適用を受ける事業者が、
登録日の属する課税期間中にその課税期間から簡易課税制度の
適用を受ける旨を記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」を、
納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、その課税期間の
初日の前日に消費税簡易課税制度選択届出書を提出したものと
みなされます。
初めての課税事業者となる事業者にとって、有利・不利の
検討を、その課税期間開始後もできることはありがたい
制度です。経過措置が当てはまるか否かを課税期間の開始前までに
行い、当てはまるのならば使いたいものです。