令和2年度税制改正大綱 個人所得課税(一般)編
税制改正大綱は与党が税制調査会を中心に翌年度以降にどのように
税制を変えるべきかを話し合い、まとめるもので政府は大綱に従って通
常国会に税制改正法案を提出するのが通例となっています。
今後の税制がどのように変更されるかを知るうえで非常に有用な資
料となります。
2月のコラムではこの税制大綱の内容について解説させていた
だきます。
今回は一般的な個人所得の改正案を取り上げます。
なお、税制大綱はあくまで税制改正案であるため今後の国会の審議に
より改正内容が変更・中止される場合もありますのでご留意ください。
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●個人課税は「人生100年時代」を意識
令和2年度の税制改正大綱が公表されました。個人課税は、人口減少・
少子高齢化が進む中での「人生100年時代」に相応しい税制づくりを意
識したものとなっています。
●低未利用地等を譲渡した場合の特別控除
高齢化の進展に伴い、所有者自身が利用する意向のない土地の増加が
予想されることから、特別控除制度が創設されました。
個人が都市計画区域内にある低未利用土地等を譲渡した場合におい
て、一定の要件を満たすときは、長期譲渡所得金額から100万円を控除
することができます(建物譲渡部分については適用されません)。
●配偶者居住権等に係る譲渡所得の取扱い
令和2年4月より施行される民法の「配偶者居住権」「配偶者敷地利
用権」について、取得費の取扱いが明記されました。
・配偶者居住権等の消滅時(対価受領)
居住建物等の取得費×配偶者居住権等割合−減価の額(居住権の設定
日〜消滅日)
・配偶者居住権等の消滅前
居住建物等の取得費−配偶者居住権等の取得費
●未婚のひとり親に対する税制上の措置
昨年の改正で持ち越しとなっていた「未婚のひとり親」の寡婦(夫)
控除は、令和2年分より控除できることとなりました。
適用要件は死別・離別の場合と同様です。寡婦に寡夫と同じ所得制限
(500万円)が設けられます。
なお、扶養親族がいない死別女性、子以外の扶養親族を持つ死別・離別
の女性(所得500万円以下)は現状のままです。
●国外中古建物の不動産所得の損益通算特例
富裕層を中心に広まっていた国外不動産を利用した租税回避の防止
策として、個人が国外中古建物を有する場合には、不動産所得の計算上、
その損失額のうち国外中古建物の償却費相当額(簡便法適用)は、生じ
なかったものとみなすこととなりました
●住宅ローン控除の適用要件の見直し
新規住宅に居住した3年目に従前住宅等を譲渡した場合に、一定の措
置法特例の適用を受けているときは、住宅ローン控除の適用はできない
こととなりました。
●その他の改正項目
国外居住扶養親族の扶養控除、医療費控除の添付書類の見直し等が図
られています。