令和2年税制改正大綱 納税環境編
税制改正大綱は与党が税制調査会を中心に翌年度以降にどのように税
制を変えるべきかを話し合い、まとめるもので政府は大綱に従って通常国
会に税制改正法案を提出するのが通例となっています。
今後の税制がどのように変更されるかを知るうえで非常に有用な資料と
なります。
3月のコラムでは、2月に引き続きこの税制大綱の内容について解説させ
ていただきます。今回は納税環境に関する税制の改正案を取り上げます。
なお、税制大綱はあくまで税制改正案であるため今後の国会の審議に
より改正内容が変更・中止される場合もありますのでご留意ください。
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●振替納税の通知依頼等がe-Taxで可能に!
令和2年の税制改正により、今まで電子申請・申告ができず、紙の書類で
提出していたものが、e-Taxの利用により手続できるようになりそうです。
【1】 振替納税・ダイレクト納付の申請
次の書類の提出は、令和3年1月以後、e-Taxによる電子申請が可能とな
ります。
(1) 振替納税の通知依頼
(2) ダイレクト納付の利用届出
なお、これらの申請手続では、申請者の電子署名や電子証明書の送信は
不要とされました(振替納税については、納税地の異動があった場合の手続
も簡素化されます)。
【2】 準確定申告の電子手続の簡素化
今まで電子申告ができなかった所得税の準確定申告について、その途が
開かれそうです。e-Taxにより所得税の準確定申告書を提出する場合、相続
人の電子署名・電子証明書の送信は次のようになります。
申請等相続人 …… 電子署名・証明書送信が必要
それ以外の者 …… 確認証を送信(署名等は不要)
大綱では、税理士の代理送信等については、明らかとされていませんが、
令和2年分以後の準確定申告より適用されます。
●電子帳簿等保存制度の見直し
電磁的記録の保存方法の範囲に、次の方法が令和2年10月より追加されます。
(1) 発行者のタイムスタンプが付された電磁的記録の受領・保存
(2) 電磁的記録の訂正・削除等が確認できるシステムによる記録の授受・保存
この改正によりカードや電子マネーの履歴をクラウド上で電子データ保存する
方法が認められます(改変不可が条件)。
●円滑な申告・納税のための環境整備
納税証明書の電子的請求について、電子委任状を添付して行うことができるよ
うになります(委任者の電子署名等は不要)。
●利子税・還付加算金等の割合の引下げ
令和3年以後は、(1)利子税特例基準割合、(2)猶予特例基準割合、(3)還付加算
金特例基準割合が年7.3%未満の場合には、次のようになります。
<平均貸付割合+年0.5%(現行年1%)>
また、相続税・贈与税に係る利子税は、次のようになります。
<利子税の割合×利子税特例基準割合/年7.3%>